日常が暗転する突然の別れ。それが不慮の事故や自死、あるいは自宅での急逝であった場合、避けて通れないのが「警察の介入」です。
病院で医師に看取られる「通常の死」とは異なり、警察が介入する「異状死」では、葬儀を行う前に行政上の厳格な手続きが必要となります。
この記事では、警察が介入した際のタイムスケジュール、必要な書類、そしてご遺族が冷静に対応するためのポイントを徹底解説します。
1. なぜ警察が介入するのか?(異状死の定義)
医師法第21条により、医師は死体に「異状」があると認めた場合、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと定められています。
警察が介入する主なケース
- 自死(自殺)
原因を問わず、自ら命を絶った場合。 - 不慮の事故
交通事故、転落、溺死、火災など。 - 孤独死・独居死
自宅で誰にも看取られずに亡くなった場合。 - 急逝
健康だった人が突然亡くなり、持病の主治医も原因を特定できない場合。 - 事件性の疑い
犯罪に巻き込まれた可能性がある場合。
これらは総称して「異状死」と呼ばれ、死因を特定して事件性の有無を確認するために、警察の捜査権限に基づいた手続きが行われます。
2. 警察介入から「死体検案書」発行までの5ステップ
警察が介入してから、ご遺体が遺族のもとに戻る(解放される)までの一般的な流れを時系列で追います。
① 現場検証と遺体の搬送
亡くなられた現場(自宅や事故現場)に警察官や鑑識課員が到着し、状況証拠の確認を行います。
- 注意: 警察が到着するまで、ご遺体や周囲の遺留品には一切触れてはいけません。 検証後、ご遺体は一度警察指定の安置所、あるいは大学病院などの解剖施設へ運ばれます。
② 検視(けんし)
検察官、またはその代行である警察官(検視官)が、ご遺体の外表を観察し、事件性の有無を判断します。この段階ではまだ医師による診断ではありません。
③ 検案(けんあん)
医師(警察医や監察医)がご遺体を医学的に調査します。
- 死体検案
遺体の外見、死後硬直の進み具合、体温、死斑などを確認。 - 薬物検査
必要に応じて血液中のアルコールや薬物の濃度を調べます。
④ 解剖(必要と判断された場合)
外見の調査(検案)だけで死因が特定できない場合、法的な強制力を持って「解剖」が行われます。
- 行政解剖
死因不明だが事件性はないと考えられる場合(監察医制度のある地域)。 - 司法解剖
事件性が疑われる場合。大学の法医学教室等で行われます。
⑤ 「死体検案書」の交付と遺体の引き渡し
死因が特定されると、医師によって「死体検案書」が作成されます。
これが病院で言うところの「死亡診断書」に代わる公的書類となります。
この書類を受け取ることで、ようやくご遺体は「遺族」のもとへ戻り、葬儀の準備が進められるようになります。
3. 遺族が警察から受ける「事情聴取」への心構え
警察が介入した場合、ご遺族は必ず事情聴取を受けます。
これは犯人扱いされているのではなく、あくまで死因や背景を特定するための標準的な手続きです。
- 聞かれる内容
故人の持病、最近の様子、最後に連絡を取った日時、経済的な悩み、家庭環境など。 - 所要時間
数時間に及ぶこともあります。
動揺している時期ですが、記憶にある範囲でありのままを話すことが、手続きをスムーズに進める唯一の道です。
4. 警察介入時に発生する「費用」の現実
あまり知られていませんが、警察が介入した際の手続きには多額の費用がかかり、その多くが遺族負担となります。
| 費用項目 | 内容 | 費用の目安 |
| 検案料 | 医師による遺体確認の診察料 | 3万円 〜 10万円 |
| 遺体搬送代 | 現場から警察・解剖施設への運搬 | 2万円 〜 5万円 |
| 安置料 | 警察指定の施設での保管料 | 1日 数千円 〜 1万円 |
| 解剖費用 | 司法解剖は国費、行政解剖は公費 | 遺族負担なし(※地域による) |
※死体検案書の発行手数料も、通常の死亡診断書より高額(1万円〜3万円程度)になるのが一般的です。
5. 葬儀社選びの重要性と「二次搬送」のタイミング
警察から「ご遺体の引き渡し許可」が出た際、速やかにご遺体を引き取りに行く必要があります。
警察署には長い時間安置しておくことはできないため、「警察から連絡が来る前」に葬儀社を決めておくことが重要です。
警察署へのお迎え(二次搬送)
警察指定の搬送業者は、あくまで「現場から警察署まで」を運ぶ業者です。 「警察署から自宅・葬儀場まで」の搬送(二次搬送)は、ご遺族が依頼した葬儀社が行います。
- アドバイス
警察指定の業者にそのまま葬儀を依頼しなければならない義務はありません。
信頼できる、あるいは費用の明明な葬儀社を冷静に選んでください。
6. 自死・事故の場合に注意すべき「保険金」と「相続」
生命保険の支払い
- 自死の場合
免責期間(通常、契約から2〜3年)を過ぎていれば支払われるケースが多いですが、調査に時間がかかります。 - 事故の場合
事故死を対象とした特約が付加されている場合、給付額が増額されることがあります。
相続放棄の検討
不慮の死の場合、故人に多額の借金があることが後から判明するケースがあります。その場合、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ相続放棄の申し立てを行う必要があります。
まとめ:ご遺族を守るための3つの鉄則
突然の警察介入に直面したら、以下の3点を心に留めてください。
- 現場を動かさない
警察の到着を待つ。 - 書類のコピーを多めに取る
「死体検案書」は、保険や役所の手続きで通常の死亡診断書以上に重要視されます。 - 専門の葬儀社を早めに決める
警察とのやり取りを熟知した葬儀社を選ぶことで、精神的な負担を大幅に軽減できます。

