消えたリンゴの謎 —— 27年前の不思議なご葬儀体験

今から26〜27年ほど前、まだ私が若かりし頃のお話です。

当時は打ち合わせから司会進行まで一通り任せてもらえるようになり、葬祭ディレクターとしてがむしゃらに働いていました。あの日担当したのは、ある集会所でのご葬儀でした。

午前中に打ち合わせを行い、その日の晩がお通夜、翌日が告別式という、今思えばかなりの強行スケジュール。

集会所での設営は、祭壇の下準備から屋外のテント張り、遺影写真の作成まで、やるべきことが山積みです。関連業者の皆さんに助けられ、なんとか夕方17時には設営を完了させました。

19時から始まったお通夜には、150名ほどの会葬者がお見えになり、式は滞りなく終了。

少しお疲れの様子のご家族でしたが、「今晩はここで寝ずの番をして、お線香を絶やさないようにします」とおっしゃっていました。

私とスタッフは、祭壇の最終チェックと備品の片付けを済ませ、その日は会場を後にしました。

異変に気づいたのは、翌朝のことです。

葬儀開式の2時間前に会場に入り、いつものルーティーンで準備を進めていました。最後に、白木祭壇を隅々まで再確認していた時のことです。

「……あれ? 何か変だぞ」

違和感の正体は、お供え物のリンゴでした。

供物台に乗せていたはずの4個のリンゴのうち、1個だけが、跡形もなく消えていたのです。

「どこかに転がり落ちたのかな?」と思い、祭壇の裏から隅っこまでくまなく探しましたが、どこにもありません。

もしかして、夜通し付き添っていたご家族が小腹が空いて食べてしまったのか……?

失礼を承知で伺ってみると、

「ええっ、リンゴ? 知らないわよ。一晩中ここにいたけど、触ってもいないわよ」

と不思議そうな顔をされるばかり。

確かにお供えした。この手で、間違いなく。

その確信があるだけに、疑問が頭から離れません。

しかし、無情にも時間は過ぎ、葬儀告別式の時刻が迫ってきます。

私は無理やり頭を切り替え、消えたリンゴのことが気になりつつも、マイクを握り司会進行を務め上げました。

出棺後の撤収作業中も、私はずっとリンゴの行方を探していました。

けれど、結局最後まで見つかることはありませんでした。

足もない、転がった形跡もない、誰も触っていない。

それなのに、忽然と姿を消した一つのリンゴ。

今となっては笑い話ですが、もしかしたら、故人様が「おっ、美味そうだな」と、一つ持っていかれたのかもしれませんね。

私がお預かりしてきた数多くの現場の中でも、今なお解けない「不思議な体験」のひとつです。